毎年9月わが町に繰り広げられる秋祭り「大槌祭り」は身も心も踊る一大イベントです。
鎮守の神様「小鎚神社」の先祓い役として祭り行列に参加する臼澤鹿子踊の一員としての誇りもあり、オレたちにとってはこの日が年間で最も大きな節目、一年の初めであり終わりなのです。

特に豪華絢爛に飾り付けた山車や屋台があるわけでもないのに、町の人々が総出で盛上る祭り、としか例えようがなく言葉では説明しきれない祭りなのです。
だから大槌に初めて訪れた方々には「祭りに来てください。」というのが常套句にもなっています。

2011年の震災後は、ボランティア等で訪れた関東や関西の方々も興味を持って参加してくれる人が増えていますが、そのなかでも今年は一味違った祭りになりました。

東北とアジアを芸能で結ぶプロジェクト「習いに行くぜ!東北へ」の一環でプロのダンサーや奏者が参加してくれたのです。

昭和40年代から、頑なに地域住民に限定して守り続けていた伝承活動を、町内各地の郷土芸能に先駆けて、地区外の参加希望者に門戸を開いた臼澤鹿子踊であったが、このような多彩なプロ集団が本格的に参加したのはまさに初の出来事でした。
動から静、不安定から安定への体さばき、動きや音の中に、想像や風景を感じさせるものがあり、プロとはいえ目から鱗でした。

さらには、自分自身も含め外からの人々とのコミュニケーションが不得手なのだが、同じ空気を吸い、稽古に汗をながしながらの会話は、互いに本音となり自ずと人格をさらけ出しての交流となり、新たな繋がりが出来ました。

年令や性別と無関係に人と人のつながりが、オレたちの郷土芸能のもつ最大の利点であると自負しているがその輪が大きく広がったのです。

大槌に400年、細々と息づいてきた臼澤鹿子踊を広く発信して頂ける期待もあります。
来年も共にと願いつつ、このご縁がさらに大きく末永く続くことをのぞんでいます。

東谷一二三(臼澤鹿子踊保存会)