東日本大震災で甚大な被害を受けた東北地方は、郷土芸能の宝庫と呼ばれ、数多くの郷土芸能の団体が存在しています。
郷土芸能団体も住民の離散や施設・装備の流失など大きな損害を蒙りましたが、震災後真っ先に立ち上がり、地元の人々を励ましました。
郷土芸能は、その地域の共有かつ固有の財産であり、人と人、世代と世代を繋ぐ役割を果たしてきた、地域コミュニティにとっての精神的な紐帯といえます。これら郷土芸能の再興を通じて、被災地の人々がかつての生活と郷土の文化に誇りを取り戻すことが、復興にとって重要な要素となっています。
これを単なる復興に留めずアジアとのネットワークに発展させることで、世界の中の郷土芸能という観点から、その価値を再発見・再認識します。各地域で大切に受け継がれてきた芸能が国内外で認められることによって、地域に対する愛着や誇り・郷土で生きる力を生み出す原動力へと繋げたいと考えます。
同時に東北の郷土芸能は、他のアジアの国々の芸能との共通点も多く、互いに知り合い、学び合い、共通点を活かし合いながら、新しいアジアの芸能を創造する可能性を秘めています。
また自然災害の多いアジア地域において、今回の被災の教訓を共有し、将来の災害に備えるため、「復興における郷土芸能の役割」や「被災地の郷土芸能の保存」等について、研究機関や行政機関と連携して、調査・研究を進めていくことも課題となっています。
こうした理念を基に、主催:国際交流基金アジアセンター・共催:NPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク(JCDN)は、「三陸国際芸術祭(サンフェス)」とも連携を取りながら、年間を通して東北とアジアを芸能で繋ぐ「Sanriku-Asian Network Project(サンプロ)」を実施しています。
アジアの芸能を招へいするプログラム
アジアの芸能団体を招へいし、東北各地の郷土芸能団体と交流し、互いの芸能の成り立ち、動き、音楽など様々な角度から、互いを知る機会とする。その中から一緒にアジアの新しい芸能を創る可能性を探る。
被災地の郷土芸能をアジアに派遣するプログラム
被災地の郷土芸能がアジアを訪れ、その地の芸能とより深い交流を行う。
芸能の交流だけではなく、その地の芸能の在り方や、継続の方法、国の文化政策などの情報を得ることにより、被災地の将来に向けた構想を考えるきっかけとする。
新しいアジアの芸能を創出するプログラム
東北の郷土芸能とアジアの芸能が刺激し合い、伝統芸能と現代とを経験・理解するアーティストを介して、新たなアジアの芸能を創りだす。
伝統と現代を結びつけるプログラム
これまで、伝統芸能や郷土芸能と一般のアーティストが出会う機会はほとんどありませんでした。
「習いに行くぜ!東北へ、アジアへ!!」や共同制作の機会を設け、これからの新しい芸能や芸術を創り出していくために、積極的に互いに刺激し合う場を創出します。
調査・研究・アーカイブプログラム
本プロジェクトを実施するための基礎資料として、東北を中心に日本の郷土芸能の実態調査を行う。
また、各芸能の記録や写真、映像をアーカイブとして保存すると共に、世界に向けて英語でも発信し、郷土芸能に関する世界的な 調査・研究を促す。
災害と芸能芸術をテーマとした学術交流プログラム
世界各地で、大きな災害があった地域では、必ず文化芸術が大きな力となって、復興に一翼を担ってきたことから、「復興における郷土芸能の役割」や「被災地の郷土芸能の保存」等の課題について、大学等の研究機関と連携して、 世界的な視野そして長期的なスパンで考える場を創る。