映像で今年の芸術祭を振り返ったほか、出席者が地元の芸能について語るなどしながら、被災地のなかでどのようにして文化・芸術を進めていくのか、などを話し合った。
同芸術祭ではオリンピックイヤーである2020年、郷土芸能を通してアジアの人々と手を取り合い、三陸から世界に向けて身体表現の魅力を発信するプログラムを発表するとしており、このプログラムについても意見が交わされた。
また、インドネシアやカンボジア、三陸の郷土芸能も披露。参加者は芸能を軸とした文化芸術プログラムの可能性について考えていた。

(東海新報 9月24日掲載記事より抜粋)

三陸とアジアの未来にむけて集う」から得たもの

生まれた地域に伝わる郷土芸能「臼澤鹿子踊」には9才から参加した。
小さな集落であったことから、そこに住む男衆は全員参加が当たり前の環境に生まれ、父親の太鼓をたたく姿が憧れでもあったし、おりにふれ周囲のおじさんたちからは、祖父も、そして祖祖父も、代々携わってきたことを聞かされて育ったこともあり、参加するのが当たり前、むしろ同年代の子供達も同様であったことから、後れずに参加したいと思った。
郷土芸能の意義とか役割りとかは考えることもなく、年に一度の秋祭りが楽しくて待ち遠しかったことが想いかえされる。
2011.3.11の震災後、早春の寒くて暗い雰囲気に活気を与えたのは、町内各地の郷土芸能だった。

国内外から多くの方々が町を訪れるようになり、郷土芸能を含めた人の繋がりが飛躍的に広がった。
私たち臼澤鹿子踊保存会の練習拠点でもある、臼澤鹿子踊保存会館「伝承館」も一時期、避難所として開放したこともあり多数の方々との交流が生まれた。
山あいの森の中にひっそりと佇む伝承館に、よもや国外のひとが訪れることや、まして同じような郷土芸能団体が来訪し、お互いの培ってきた芸能を交歓するなど、夢にも想像しなかったことが現実におこったのである。

最初はお互いに珍しいぐらいの興味にしかつきないものが、息遣いが伝わる距離で独特のリズムや動作に触れることで、言葉がわからないながらも、通じ合える想いが体感できた。

9月22日と23日、大船渡市、陸前高田市で開催の、人と自然の生命を祝う━リズムと仮面が繋ぐアジア━や、三陸とアジアの未来にむけて集う、に参加した。伝承館での交流を経ての、共に晴れ舞台ともいえるステージでの共演では、互いの芸の凄さの感動に加え、失敗のないパフォーマンスを祈るような、親近感が湧き出る感覚に駆られた。

風土や習慣が違っても、それぞれの郷土で培った芸能を通じての温もりや連帯感のような感覚を禁じえなかった。
これが地域とか国とかの枠組みを超えた郷土芸能の持つ底力なのかもしれない。

東梅英夫(臼澤鹿子踊保存会)