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【三陸芸能つなぐ声】 Episode 05|第五話「山田町の郷土芸能と祭礼」

  • 2021
  • 鑑賞


語りつなぎ人:阿部武司 |アベ タケシ/ 東北文化財映像研究所 代表


1945年栃木県生まれ、東京都育ち。1976年、岩手県移住。1987年に映像制作会社アサヒプロダクツを設立。現在は東北文化財映像研究所所長として民俗芸能など無形民俗文化財の映像記録を中心に活動。



山田町は、祭礼の神輿渡御を郷土芸能が囃し立て大きく盛り上がります。盆と正月に帰省しなくても祭りには満を持して帰ってくると言われるほど祭りが町民の心意気になっています。3.11で甚大な被害を受けながらも郷土芸能を中心に祭りが盛り上がったことは、被災地復興の心の支えになったと言えるでしょう。

 下閉伊郡山田町には、神楽、大神楽、剣舞、鹿踊、虎舞、さんさ踊りなど祭礼や年中行事に活動する郷土芸能いわゆる民俗芸能が各地区にあります。
 現在の山田町は、明治22年(1889年)には市町村令によって飯岡村と山田村が合併して山田町になり、豊間根村・大沢村・織笠村・船越村の5町村でした。江戸時代の大字の範囲が村としての行政になったのですが、民俗芸能の多くは、小字の単位・集落で伝承されてきました。それぞれの地区での活動を見てみると、5月下旬(旧暦4月8日)、織笠八幡宮例大祭には、不動尊神楽、織笠八木節などが奉納しています。

 豊間根地区には、荒川念仏剣舞・豊間根鶏舞・大川さんさ・小川さんさ・新田さんさ・長田七福神の6団体がありますが、近年は荒川念仏剣舞・大川さんさが6月上旬の荒川白山神社例大祭に山田地区からの数団体も加わって奉納しています。

7月上旬に関口地区の関口神社不動尊例大祭には、地元、不動尊神楽(写真1)・山田大神楽(写真2)・関口剣舞(写真3)の他に山田地区の数団体が奉納しています。

※写真をクリックすると、大きくご覧いただけます。

写真1 不動尊神楽
写真2 山田大神楽
写真3 関口剣舞

7月下旬船越の荒神社の祭には、荒神太神楽、山ノ内剣舞(写真4)、湾台虎舞(写真5)などが奉納します。

写真4 山ノ内剣舞
写真5 湾台虎舞

8月上旬に大沢地区の魚賀波間神社祭礼には、大沢太神楽・山谷獅子踊・大沢虎舞が奉納しています。

8月下旬、3年ごとの船越諏訪神社例大祭には、船越太神楽(写真6)、山ノ内剣舞、湾台虎舞が奉納します。

写真6 船越太神楽

9月中旬の山田祭りと称される山田八幡宮と大杉神社の例大祭が連動して執り行われ、不動尊神楽・八幡大神楽(写真7)・山田大神楽・山田剣舞・八幡鹿舞(写真8)・境田虎舞(写真9)と愛宕青年会八木節(写真10)が奉納し、神幸にお供し門打ちます。

写真7 八幡大神楽
写真8 八幡鹿舞
写真9 境田虎舞
写真10 愛宕青年会八木節

9月中旬に大浦地区の霞露ケ岳神社例大祭に大浦太神楽(写真11)、大浦虎舞(写真12)、大浦さんさ踊り(写真13)が奉納します。この祭りは3年祭でしたが震災後、毎年行うようになりました。

写真11 大浦太神楽
写真12 大浦虎舞
写真13 大浦さんさ

1999年のとある調べによると神楽が3団体、大神楽が4団体、剣舞が3団体、鹿踊が2団体、さんさ踊りが4団体、虎舞が4団体と七福神でした。
不動尊神楽は、黒森神楽のメンバーだった人が再興したと言われます。
船越地区の大神楽は、大槌町の団体から指導を受けて再興したと言います。


| 山田町史観 |

715年(霊亀元年)
蝦夷の“須賀君古麻比留”が、「閉村に郡家を建てて下さい」という記述が『続日本紀』にあり、この頃には当地方にも国政が及んでいたことが推測される。

1643年(寛永20年)
山田湾にオランダ船ブレスケンス号が水・食料を求めて入港するが、オランダ人10名が南部藩に捕らえられ江戸に護送される。

1735年(享保20年)
南部藩の領内が33通りに整理され、豊間根地区は宮古代官所の管轄に、大沢・山田・織笠・船越地区は大槌通りとなり大槌代官所の管轄になる。

1868年(明治元年)
陸奥国は分割され、当地方は陸中国に属すことになる。

1889年(明治22年)
市町村制実施。飯岡村・山田村は合併し山田町となる。豊間根村・大沢村・織笠村・船越村が誕生する。

1896年(明治29年)
三陸沖を震源とする地震、大津波が発生。本町の死者は約2,950人、負傷者は約1,370人。その他、家屋の流失や全壊等多くの被害を受けた。

1933年(昭和8年)
三陸沖を震源とする地震、大津波が発生。本町死者・不明者は18人、負傷者は12人。その他、家屋の流失や全壊等多くの被害を受けた。

1935年(昭和10年)
国鉄山田線-盛岡駅~陸中山田駅間が開通。

1955年(昭和30年)
山田町・豊間根村・大沢村・織笠村・船越村の一町四カ村が合併し、新山田町が誕生する。







文・写真:阿部武司
東北文化財映像研究所 代表
Japanese folk performing arts 東北文映研ライブラリー映像館
https://www.youtube.com/channel/UCqsSSJ1N_R5KPXXyl-9J0xw



文化庁委託事業「令和3年度戦略的芸術文化創造推進事業」

主催:文化庁、三陸国際芸術推進委員会

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