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【三陸芸能つなぐ声】 Episode 04|第四話「髪長姫がもたらしたもの」

  • 2021
  • 鑑賞

「無心で踊る」

ー その他、踊った時の感想などお聞かせください

智一:自分はめったに踊る機会も少ない中でみんなと踊れて、しかも神社の前で踊るというのがあまりないので、楽しかったなと思いましたね。いい思い出でした。

ー 境内で踊るという経験はあまりないのでしょうか?

健司:無いです。四年祭のお祭で子供たちが奉納で踊るくらい。ちゃんとした感じで神社で踊るのは大人の場合はもうないんじゃないかというレベルですね。

ー 通常なら見ている観客に向かって踊ると思うのですが、今回は御社に向かって皆さん踊ってらしゃいました。神様に向かって、というのはどうだったですか?

直也:無心だったです。

健司:やっぱり無心だね。

ー その無心の感じは子供の時とそんなに変わらないですか?

健司:変わらないですね。多分目の前で見ている人がいても無心だと思いますね。見られてるって感はもうないかな。

隆夫:無心になるしかないですかね。

健司:何も考えないよな。

「次につなげていく」

ー 「七福神が頭から離れなかった」「自分の中にあるもの」「続けていかなきゃいけないもの」と、皆さんが仰るワードが印象的ですが、続けていかなければいけないと思う何かっていうのは、何なのでしょう。

健司:自分の代で終わらせたくないっていうのはありますよね。せめて誰かに譲って終わらせたいなって。そうやってOBの人たちもどんどん下の者に伝承して引き継いできてるものなので。それを「いや、もうやめようよ」とは言えない事なので、預けられた以上は続けていかなきゃいけないという。使命感しかないですね、それだけで動いています。命をかけてますとかではないんですけど、終わらせちゃいけないと、それだけですね。

ー そこから健司さんが今回、若い世代の皆さんにバトンを渡して、皆さんが今度引き継いでいくっていう。

健司:これから勝哉くんが言った通り、太鼓も立派なのがあるので、お囃子をやれるようにしながら、光重君が言ったように、ここだけじゃなくて少しずつ他へ広げていかないと。今後も続けていけないと思っているので、一回踊った子たちにどんどん声をかけて、今度参加してもらうとか。社会人でもいいんですけど、参加してもらって少しずつ輪を広げていって人を増やしていかないと、上(の世代)がどんどんいなくなってくるので。


「お囃子復活を目指す」

ー 震災の時は道具とかそういったものは大丈夫だったんでしょうか?

健司:ここ(喜多公民館)は大丈夫でしたので、丸々残っている。物はあったんですけど、やる人がいないという状況。教えれるような人達はいるんですけど。昔は、役に溢れた子達がお囃子や太鼓をやったりしてたんですが、人も足りないし集まりも悪くなっちゃって。教えようにも教えられない状況です。

ー 太鼓はできる人はいますか?

健司:太鼓は皆できるかな。単純なんで。

勝哉:笛だね問題は。

ー 笛をやる人はどの団体もいないと聞きますね。

健司:そうですね。縦笛だったらできるかもしれないけど横笛だからな。

ー やはり笛が引っ張るんですね。太鼓はそれに合わせてるだけで。

健司:歌い手も笛だよな、合わせるのは。でも子供たちも練習期間で覚えて吹くようになるんで、多分誰でも出来るとは思うんですけど。その問題は今後考えてみます。何としてもお囃子は復活させたいなと、その思いだけですね。

ー ちなみにお囃子の「みっさいなーみっさいな」は、この地域だけのお囃子でしょうか?

健司:末崎も「みっさいな」でしたね。ここから流れていったから。何なんでしょうね、「みっさいな」って。


「最後に」

ー では、お一人ずつ、ホームページを見てくださる人達や地域の皆様に伝えたいことがありましたらお聞きしたいです。

隆夫:皆さんに伝えたいことは、(世の中には)こういうものもあるんだよと伝えたい。伝統を引き継ぐという部分が、若い人がダサいとか思ったりするかもしれないけども、別にそこまでのものじゃないって部分もありますし、実際にやったらやったで楽しいし、その中で引き継いでいきたい、語り継いでいきたいみたいな気持ちも生れるかなって思って。悪いものじゃないんですよっていう感じでしょうか。

勝哉:喜多の子供たちに伝えたいことは、今度はあなたたちが引っ張っていってくださいねって、という事です。
それ以外の方々には、これがうちらの住んでるところの代表的なものです、あとはそれぞれどう思うかは感じてくださいっていう。
伝統芸能っていうのは昔から続いていて、さっき言った使命感じゃないけど、ずっと残していかなきゃならないっていう、ただその思いだけなので。この踊りで元気になってくれとかそういうのは一切なくて。単純に残していかなきゃいけないっていうだけで。あとは、それを見て楽しい気持ちになったりとか、切なくなったりとかそういうのは個人個人で感じてもらえれば。賛否両論あってもいいですし、ただ一本の心理はそれですね。

智一:若い世代の方々は、今ネットの時代なのでいろんなものが手軽に見れるじゃないですか。郷土芸能といえば虎舞とかのイメージが多分強いと思うんですけど、七福神の踊りを恥ずかしいというイメージを持ってほしくないので、これをきっかけに皆で広げていって欲しいなということを若い世代に伝えたいですね。

光重:広田は海ばっかり、たまに山もあり、みたいな所なんですけど、まず広田に来てほしい。広田に来て、こんなに海広いんだー、周りに山もあるんだっていう場所で栄えてきた郷土芸能の一つにこの喜多七福神があって、こういう場所で発展してきた踊りなんだっていう。広田って結構端っこの場所だけど、でもいい場所なんですよ。何にもないんですけどでも何でもある。そういう場所なのでまずは、郷土芸能うんぬんの前に、広田に一回来て”みっさいな”って言ってみたいですね。

航太:郷土芸能を通じて陸前高田市とか広田とかを分かるきっかけになってもらえれば。どういう所なのかって足を運んでもらったり、調べてもらったりっていうだけで、知名度などが変わってくると思う。陸前高田とか広田の知るきっかけの1つになってくれれば。そうなったら、十分、喜多七福神が活躍したんだろうなと思うので。

直也:映像や告知で見てから、実際に見る機会で一番近いのは来年(2022年)のお祭りですかね。やっぱり実物を見てもらった方が一番早いと思う。見た人の価値観とかを変えるとかっていう目的は全然ないと思うんですけど、見た人が少しでも気持ちが傾いたりとかしたら成功なのかな。

健司:こんな小さな町の小さな集落で伝承してきている踊りですので、お祭りの時にしかお披露目することはできないんですが、実際に見ていただきたいと思いますし、何か参加させてほしいというのがあれば声を掛けて頂ければ、人も少ないですし、色々お手伝いしていただいたりもできるとは思いますので、やってみたい人いればぜひお声掛けいただきたいです。あとは使命感だけです。


ー ありがとうございました。本当に皆さんチームワークがいいなと撮影現場でも、今日のインタビューでも感じました。

健司:地域柄、広田って上下関係がほぼないんで、年離れていても下から文句言う。普段会うことって近くにいてもないんですけど、会えばこういう風に一つにまとまることができる間柄なので、今回(髪長姫の出演で)私も安心しましたし、広田でよかったなと。
この気仙地区じゃ広田って特殊な人種しかいないんですよ。半島人っつうもので、周りからは結構荒いって言われます。
うちのお義母さんは高田町の人ですが、その世代は広田に絶対嫁に行くなって言われるくらい。血の気の荒い、けど、調子者で、なんなら付き合いづらい人種が多いって。

勝哉:情はあるんですよね。

健司:情はすごくあります。広田愛はすごいです。

勝哉:広田人で広田嫌いって人いないんじゃないかなって。

健司:いないと思います。
コンビニもねえ、信号も一個しかねえ。凄く不便なんですけど嫌う人はいない。海もある、山もある、子どもを育てるなら広田じゃねえとダメだって皆言ってる。やっぱり自然がたくさんあるし、車が走らないから道路で遊んでても轢かれない。そんな感じですけど。広田とは。



インタビュー:越戸園佳、青木美由紀
記録:佐藤典之
編集:青木美由紀



文化庁委託事業「令和3年度戦略的芸術文化創造推進事業」

主催:文化庁、三陸国際芸術推進委員会

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