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【三陸芸能つなぐ声】 Episode 04|第四話「髪長姫がもたらしたもの」

  • 2021
  • 鑑賞

三陸国際芸術祭2021 芸能交流プロジェクト「ふえlab」の成果発表である「髪長姫 〜アジアが紡ぐ笛ものがたり〜」。
オープニングアクトとして参加した、陸前高田市広田町の『喜多七福神(きたしちふくじん)』の皆さんに、参加後の反響や久々に踊った感想などを伺いました。
陸前高田市の広田半島先端に位置する広田町。人口3000人にも満たない小さな海の町で「喜多といえば七福神」と誰もが口にする『喜多七福神』は、広田が発祥の地という話があるそうです。
昔から子供達の踊りとして継承され続けてきましたが、今回、子供達に踊りを伝授する立場の「師匠」の皆さんが出演してくださいました。
四〜五年に一度開催される祭りで踊られてきたこの舞は、地域の子供達全員が踊ることができるわけではありません。舞披露の機会が限られており、震災後の人口減少やここ数年コロナによる活動制限が追い打ちをかけ、活気が無くなっていったのは喜多七福神も例外ではありませんでした。
今回「髪長姫」への参加をきっかけに再起の意志を固めることとなった経緯、何故大人たちが踊ることになったのか、継承し続けていくことへの想いなどを聞かせていただきました。



語りつなぎ人:『喜多七福神(きたしちふくじん)』の皆さん(陸前高田市広田町)

喜多七福神舞は、民間信仰の神として、七人の福徳の神、大黒天・恵比寿・福禄寿・毘沙門天・寿老人・弁財天・布袋様に仮装し、祭礼には、五穀豊穣・大漁祈願をします。併せて家内繁盛・厄払いとして結婚披露宴、進水式・新宅祝い等めでたい席に福徳を祈る年中行事として行われています。その由来は大正初期から喜多の有志により伝承され、四年祭の御伊勢様(大神宮様)の祭典をはじめ黒崎神社例大祭に奉納されてきました。また近年は、祭りのみならず地域の郷土芸能として小中学生による地域活動も行われています。



「 活気を取り戻したい 」

【寿老人役】村上勝哉
(以下、勝哉)

この機会にこれからお囃子も揃えて活気を取り戻したい、と勝哉さん。
寿老人の舞では、強弱をつけ、キレよく踊る事を意識していたとのこと。
「自分たちが子供の時の舞を見てくれていたおばちゃん達が『懐かしいね!』と喜んで見てくれました。」

ー まずは今回踊っていただく事を決めたきっかけを教えてください。

勝哉:震災後2・3回やったのかな、七福神。
震災前は太鼓やお囃子も人数を揃えてやってたんですけど、震災後は自粛することになり、震災前ほど元気がなくなった。
だから今回少しでも喜多七福神をアピールして、今後の活気をもう一回取り戻すという面で幾らかでも影響が出てくればと。

【福禄寿役】伊藤 光重
(以下、光重)

福禄寿の夕顔で作った長い頭をつけて舞うのが大変だったと光重さん。
「自分たちの身ぶり手ぶりが手軽に、画面の向こうの人たちがポチっとやって見てくれるっていう、そういう状況ができているのは非常にありがたいことですよね。」

光重:こっちも踊るきっかけは4年…5年に1度のお祭りぐらいしかなくて。
なので今回は(YouTube配信で)多くの人に見ていただける機会ができたんじゃないかな

【布袋尊役】鈴木 航太
(以下、航太)

今回、子供の時と違う役を踊った航太さん。踊ったことは無くとも、子供の時から見ていたので、布袋尊の舞が頭の中に入っていたそう。
「何かが劇的に変わったっていうのはないのかもしれないんですけど、でも今回踊ってよかったなとは思ってました。」

ー 周りの反響はいかがでしたか?

航太:娘の学童を迎えに行った時に出てましたねって言われて(笑)。
何で知ってんだろうと思ったんですけど、陸前高田市の広報で出てたんですね。
その学童で子供たちと一緒に映像を見てくれたらしくて。子供たちも保育園で踊るから、興味を持って見てくれたとは思います。

「子供達が踊れないなら、大人でやろう、まずは踊るべ」

【毘沙門天役】村上健司
(以下、健司)

皆から「健司兄ちゃん」と慕われている喜多七福神師匠達のリーダー健司さん。七福神は多々あるが、やっぱりうちが一番と笑顔で話してくださいました。
「髪長姫は、コラボの仕方とか音楽に合わせて海外の方々が踊ったりとか、そういう合わせが非常に斬新で面白いなと思いました。」

ー 久々に踊られてどうでしたか?

健司:いつもは先生として教える側なんですが、今回は先生方たちで踊るということで…。年も年ですので体幹がちょっと悪く、片足になったりして踊るところがありまして、そこがちょっとふらついたり。よくこういう鎧着て子供たちが踊ってたなと、自分が踊ってみて思いましたね。

ー 今回コロナで髪長姫参加も危ぶまれた状況で子供たちは踊れない、大人が踊ろうと決まったのはすごいことだと思ったのですが。

健司:以前頼まれたけど色々あってできなかったというのが今回の参加の1番のきっかけで。今回お願いされたのが2回目だったので、今回はやってやろうという感じもありました。あとは皆も踊りたかったもんね?(笑い)

一同:(笑い)

健司:子供達も部活やら何やらもありますし。お祭りだったら親も子供に踊らせたいので、色々足を運んでくれるんですけど。単発のイベントってなると親を説得するのも、召集かけて皆に説明する時間っていうのも、全くない状況でしたので。
無茶ぶりではありましたけども、大人でやろう、まず踊るべと。皆で話し合って出演を決めましたね。いつもはお祭りで本当に子供達だけ。子供たちじゃなきゃダメなんですよ、お祭りは。なんでか分かんないんですけど。小中学生の子供たちが踊って意味のある踊りになるので、通常、大人ていうのは踊らないんです。その子どもたちから大人が奪って踊っちゃだめだとOBから教えられています。

「これから一緒にやっていこう」

ー 子供達の踊りを、あえて今回「髪長姫」の為に師匠の立場である皆様に踊っていただいたわけですが、健司さんから直接声をかけてこのメンバーだったんですか?

健司:そうですね。前回の例大祭でこのメンバー発足したので。
その時、自分一人じゃどうにもならないからって経験者を集めて。これから一緒にやってこうと。だから今回も踏まえ、さらに絆が強まったかなと思います。やらされてる感はあるのでしょうけど、俺もそうだったからずっと。ただ伝承していかなければいけないし、周りの協力も得ないと私一人だけじゃどうにもならないので、皆さんに頑張っていただきたいです。

ー 皆さんはそれによって気持ちの変化などはありましたか?

勝哉:今まではお祭りぐらいしか踊らないものを、こうやって皆さんのおかげで踊らせてもらい配信されたじゃないですか。改めて喜多七福神を活気づけるいい機会になったと思う。
次のお祭りなども、以前のような活気でできるように、お囃子の歌もずっとテープのを使っていくのではなくて、子供や周りの人たちに喜多七福神をもっとアピールしてって活気に繋げていかなきゃならないなっていう気持ちは強まりましたね。

光重:これからこういった内輪のものがちょっとずつ外、外ってなっていく機会が増えていくかも分からないので、俺としては意外と馬鹿にならないなって思っています。いい機会だと思ってますね。
ネットで色々発信できる世の中で、こうやって凄い機材で撮られている訳ですよね。
伝統なんですけども、よっこいと重い腰上げてやってみたら意外と楽しいじゃないかと、私としてはそう思っている節がありますね。なので次回もあれば。

【大黒天役】村上 智一
(以下、智一)

舞の先陣を切った大黒天役の智一さん。回る円の大きさを意識し、上手く間に合うかなと思いながら踊ったのが難しかったとのこと。
「身近な人から、映像の編集と踊りがマッチしててすごくいいという声を聞けたのがよかったなと思います。」

智一:小さい頃踊ってた時は教えられた通りにしか踊る気持ちはなかったんですけど、大人になって、歌聞きながら、健司兄ちゃんにも教えられながらなんですけど、この役だったらこうしたほうがいいのかなっていう工夫を考えながら踊ることができたかなと思いますね。年齢もみんな違うんですけど、集まる機会が少ない中でいいチームワークでできて絆も深まったかなと思います。

【弁財天役】  佐々木 隆夫
(以下、隆夫)

「私、弁財天役には立候補でした。」と隆夫さん。子供の頃、男の子だけのメンバーから『弁財天』役を決めるのに時間がかかっていたそうで、早く帰りたい一心で、立候補したのだそう。立候補したからには適当なこともできない、と、自分で創意工夫した舞は、サンフェススタッフに「女性だと思っていました」と言わしめるほど。

隆夫:今回の機会で自分が踊るってなった時に改めて、教えたりする人は限られてるんだなと感じたので、これから先こういう機会があったら参加した方がいいのかもしれないって思うような変化がありました。

ー 今までそんなに積極的には関わっていませんでしたか?

隆夫:そうですね。仕事の時間があるので、参加できないみたいな感じでいたんですが。会社の人と話をして、この日これがあるので早くあがりたい、とかっていうのも融通効くんだなと思ったので。こういうのは積極的に出たほうがいいんだなっていうのは感じるようになったので、そこは感謝ですね。

航太:小さい頃踊ったときはやらされてる感はあって、前に出て何かするっていうのもそんなに得意ではないので。でもこうやって呼びかけられた時に(自分が)来るも来ないも自由だったとは思うんですけど。来て皆と一緒にやって、ずっと頭のどっかには喜多七福神があって、踊りも忘れてないしやっぱり何も変わってはないんだけど、ずっと自分の中にあったものなのかなっていう感じはします。
だから何かが劇的に変わったっていうのはないのかもしれないんですけど、でも今回踊ってよかったなとは思ってました。

【恵比須役】村上直也
(以下、直也)

配役の多くは顔で決まり、中でも直也さんの家系は代々恵比寿様を担っています。家の神棚には恵比寿様が沢山貼ってあり、弟さんも恵比寿役と、筋金入りの恵比寿顔。
「自分は皆より歳が若いので足を引っ張るわけにはいかないと思って、ずっと踊りの練習してました。」

直也:話をもらった時は正直、他の皆さんとだいぶ年離れてるし、一番下なんで大丈夫かなとは思ってたんですけど、いざ踊るまでの間の時間は喜多七福神が中心にあって。ずっとそれが中心で回ってたんで自分でもびっくりしました。頭から全然離れなくて七福神が。いざ本番ってなった時に早く終わってほしいとかっては思わなかったですね。

→2へ続きます

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